令和6年8月号 亀井奈緒さん(俳優・劇団「スタジオ アルマ」主宰)

更新日:2024年7月27日

プロフィール

亀井かめい 奈緒なおさん

(市内出身)

 所沢生まれ、所沢育ち。オペラ歌手の父とピアニストの母を持つ。休みの日の過ごし方は稽古。エネルギッシュだと言われますと笑う。
 母校から研究室の助手として声がかかり、月曜から土曜日は大学で働く。さらに、年2回は舞台をやるという目標を自らに課し、稽古にも余念がない。 

かけがえのない瞬間に心を尽くす

 インタビューを始めると、涼やかな目はくるくると雰囲気が変わり、その表情の幅広さに演じる人なんだと実感する。
 初舞台は4歳。オペラ歌手であった父の舞台に子役として出演。その時はセリフのない役だったが、いつ思い出しても楽しくて誇らしい気持ちがよみがえる。
 小学2年生のときにはオーディションを勝ち抜き、所沢商工会議所主催のミュージカルに、さらに小学4年生では新国立劇場で3度目の舞台に出演した。そこから演劇の道に進むかと思いきや、鼓笛隊でトランペットに夢中になる。
 所沢中学校では吹奏楽部に入部。打楽器を担当し、毎日ドラムスティックを握りしめる部活漬けの日々。その努力が実り、全国吹奏楽コンクール西関東大会出場の快挙を遂げた。
 演じたい気持ちはずっと心の中に残っていた。高校では演劇部へ入部し、大学は、名門、桐朋学園芸術短期大学へ進学。先輩たちの演技を見て、直感的にここだ!と感じた。入学後は、踊り、歌唱、演技など、学業は多忙を極めた。加えて、学生会の会長を務める傍ら、空き時間は稽古に費やし、朝6時に家を出て、終電で帰宅する生活を送る。
  
 演じるときは、台本に加えて、資料を読み、映像を見て、とことんまで考える。気を失うように眠り、起きてまた考える。
 ふと季節のうつろいに気付いて、涙がこぼれるほど役に没頭することもある。過酷とも思える過程も大切な時間。自分も相手も周囲の環境も、一日として同じ状態の日はなく、毎日新しい気付きがあるという。
 卒業後、俳優として活動するなかで、舞踊家である現在の夫と出会い、新たな挑戦を始める。身体で表現する舞踊と、言葉で表現する芝居を融合させて、自分たちの表現を発信していきたいと劇団アルマを立ち上げた。
 
 感受性豊かな「子ども」という存在が大好きで、演劇を通じて、何か少しでも心に残ることを伝えたいという使命感がある。3月には生まれ育った所沢で、演劇に親しんでほしいと、務めていた学童クラブでのワークショップ、中央公民館での公演が実現した。子どもも楽しめるストーリーにしようと作ったのが、サーカスを舞台にした三部作。「流れ星サーカス団物語」のうち一作品を上演した。中央公民館は中学校の吹奏楽部のときに、こけら落としで演奏をした思い出の場所。所沢とのつながりを再確認した。
 言葉を紡ぎ、物語を生み出し、舞台を形にしていく過程には苦しみもあるが、自らの望みを叶えている実感がある。
 次の舞台に向けて、今日も怒涛の日々を送っている。
(取材:上地)

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