令和2年9月号 中村 哲郎さん(ユニバーサル野球 ゲーム盤発明者)

更新日:2020年8月27日

プロフィール

中村なかむら 哲郎てつろうさん

(若松町在住・在勤)

堀江車輌電装株式会社所沢営業所所長。
鉄道車両の整備を行う会社の障害者支援部門で、ユニバーサルスポーツを通した社会参加や就労を支援している。
誰もが「ガチで」平等に楽しめるユニバーサル野球ゲーム盤を開発、特許を取得。
自身もかつては、北海道の強豪校で甲子園を目指した高校球児。
「ユニバーサル野球」は、堀江車輌電装株式会社の登録商標です。

ユニバーサル野球でユニバーサルな社会づくり

場内アナウンスで名前が呼ばれ、バッターボックスの自分に視線が集まる。
打球の行方に一喜一憂し、健闘をたたえ合う。
障害があってもなくても、どんな年齢でも「一緒に」楽しめる野球を。
中村哲郎さんのそんな思いから、「ユニバーサル野球」は生まれた。

「きっかけは、野球が大好きな重度障がいの少年の『野球をやりたい』という言葉でした」と中村さん。

何とか彼に野球をする喜びを感じてほしいと試行錯誤を重ねること3年。2019年3月に所沢の作業所で専用のゲーム盤が完成した。

約5メートル四方のゲーム盤は、車いすでも見渡せる高さ。ホームベース上を回転するボールにタイミングを合わせ、軽くひもを引くだけでバットが振れる。

絶対に空振りしない、でもタイミングが合わないとヒットにならないので、老若男女、重度障害者からプロ野球選手まで同じルールで平等に勝負ができるのが最大の魅力だ。

元高校球児。かつては北海道に暮らしていた。

仕事の傍らパラスポーツの指導をしていた中村さんが目の当たりにしたのは、スポーツを教えても就職に結びつけられない厳しい現実だった。

そんな時、就労・生活など障害者への総合支援を行う現在の会社の事業を知る。障害者の「スポーツ+働く」を実現したいと、転職・上京したのは、4年前。48歳の時だった。

2年前からは、気兼ねなく作業ができる環境を求めて所沢へ。

国立障害者リハビリテーションセンターがあること、母校の野球部OBが多く入団し、社会貢献事業に積極的な埼玉西武ライオンズの本拠地であることからも、親しみを感じている土地だったという。

完成したゲーム盤を携え、各地に紹介する活動を本格化させた矢先、新型コロナウイルスの感染拡大が起こった。

逆境の中、それでも中村さんは前を向く。

「風に強い屋外タイプを設計中です。『三密』を避けられるし、場所の幅が広がりますから」。

大声を出せない代わりに、太鼓やメガホンを使った「楽しむ応援」も音楽家とコラボして模索中だ。

ユニバーサル野球を通して中村さんが目指すのは、障害のあるなしに関係なく誰もが一緒に輝ける社会。

「当たり前のように一緒に遊んだ子どもたちは、将来必ず、自然に同じフィールドで一緒に働くようになるでしょう。

ユニバーサル野球はその力になれます。
出会いの場として、人をつなぐ場として、長く活動を続けていきたいです」。

8月某日、所沢市内で初の体験会が行われた。

少人数・声援なしでも目を輝かせて一緒に楽しむ参加者の姿。

見ていると、中村さんが目指す未来の足音が、すぐそこに聞こえる気がした。

(取材:加賀谷)

Web版こぼれ話

「愛」と「夢」いっぱいの作業場

取材に訪れた所沢営業所は、中村さんの住居兼作業所。

知らなければ気づかずに通り過ぎてしまいそうなこじんまりとしたたたずまいの内側は別世界でした。

ボードにきちんと掛けられた工具に混ざって飾られている、たくさんの野球関係のグッズやフィギュア。

長押の上にずらりと並ぶのは、研究のために集めたという、歴代の「本家」野球盤の数々。

一瞬、仕事を忘れて見入ってしまいました。

また、壁いっぱいにユニバーサル野球を通じてつながる全国の仲間たちの写真が貼ってあって、

「愛」と「夢」にあふれたこの空間でユニバーサル野球が生まれたのかと、感無量でした。

「夢は『世界』です」と語る中村さん。

ユニバーサル野球が障害のあるなし、年齢だけでなく、国境を超える日もきっといつか来ることでしょう。

所沢初の体験会は、本格的!

令和2年8月1日(土曜)に行われた体験会。

感染防止のため、少人数・声援なしで行われましたが、当日は本職の審判や場内アナウンスの方も来場して、臨場感たっぷり!

ユニバーサル野球のゲーム版は段ボール製の組み立て式なので、終了後は参加者のお子さんたちも手伝って、片付けもスムーズ。

最後まで「一緒に楽しむ」野球ゲームでした。

ユニバーサル野球の活動など、詳しくは同公式サイトをご覧ください。

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所沢市 経営企画部 広報課
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